セルフ・コンパッションとは
「コンパッション」は仏教用語で「慈悲」。
「困難のさなかにある存在に心を寄せ、その痛みや苦しみが取り除かれるように願うこと、また、そのために行動すること」を指します。
どの時代においても良いリーダーに求められる資質ナンバーワンと言えますが、誰かの力になりたい、人の役に立ちたいと真に願うなら、まずは自分自身にしっかり寄り添うところから始める必要があります。
なぜなら、自分を必要以上に厳しく扱っているうちは、他者へも本当の意味での思いやりをそそぐことができないからです。
自分の経験する苦しみや痛みに優しさを持って向き合う方法を学ぶことで、他者を赦し、寄り添い、勇気付けられるようにもなるでしょう。
セルフ・コンパッションの3つの要素
1. 自分への優しさ (Self-Kindness)
セルフ・コンパッションとは、自分の痛みを無視したり、自己批判で鞭打ちしたりするのではなく、苦しんだり、失敗したり、不十分だと感じる時に、自分自身を温かい思いで見守り、理解しようとすることです。
セルフ・コンパッションの度合いが高い人は、失敗、自分の不完全性、不十分さを、人間として避けられないことと理解します。
物事がうまく行かない時や、理想とするスタンダードに達成していない時、そんな自分に怒りを抱くのではなく、痛みを伴う経験に直面した自分を優しく受け入れる傾向があります。人は常に望むような姿でいられることはないし、欲しいものをいつも手に入れることもできません。
この現実を否定したり、苦しみに争ったりすると、ストレスや欲求不満、自己批判が増大します。人間として避けることのできない「現実」を、思いやりのある優しい気持ちで受け入れらると、感情的・精神的な「平静」につながるでしょう。
2. 共通の人間性 (Common humanity)
欲するものを望みどおり手に入れられない時に生じる苛立ちは、「私だけ」が苦しんでいる、自分だけ何か間違ったことをしているというような、不合理な孤独感を伴います。しかし人間である限り誰でも苦しみを経験するし、誰もが弱さや脆さを抱え、不完全であるのです。
セルフ・コンパッションには、こうした苦しみや不十分さは、全ての人が共有する経験だという認識が含まれます。
「私だけ」に起こるのではなく、人間誰しもが痛みや苦しみを経験するということです。そうした人間としての本質を認めれば、失敗や人生の困難を個人的にとらえる必要はないこと、良い、悪いと判断せずに思いやりと理解をもって受け止めることの大切さが感じられるでしょう。
3. マインドフルネス (Mindfulness)
否定的な感情を抑圧したり誇張したりしないために、セルフ・コンパッションが与えてくれるバランス感覚が役に立ちます。
自分の経験を他の人の経験と関連付けて捉え、個人的な状況をより広い視点から見ることができると、このバランスにつながります。また、私たちの否定的な考えや感情に心を開いて明晰に観察すれば、マインドフルな気づきが生まれるでしょう。
マインドフルネスとは、自分の思考や感情を抑制したり否定したりすることなく、そのままを観察すること。良し悪しを判断せずに受容している意識の状態です。
自分の痛みを無視しながら自分へのコンパッションを感じることはできません。と同時に、否定的な反応に巻き込まれたり流されたりしないためには、マインドフルであることがとても役に立つのです。
世界的に評価されているトレーニング・プログラムに参加して、
あなたのセルフ・コンパッションを育てませんか?
MSCプログラムとは
マインドフル・セルフ・コンパッション (MSC™️)は、マインドフルネスと心理療法の統合分野でリーダーとして知られるクリストファー・ガーマー博士(ハーバード大学)と、セルフ・コンパッション研究の先駆者として名高いクリスティン・ネフ博士(テキサス大学)によって2010年に開発されました。
現在までに全世界で10万人を超える人が受講し、20を超える国と地域で提供されています。
セルフ・コンパッションの特徴
社会的価値観や文化によって抑圧された悲しみや怒りが、無意識のなかで古い傷やトラウマとなっているケースは少なくありません。意識の奥底にギュッと押し込めてきた過去の辛い経験にセルフ・コンパッションを持って向き合うことで、頑なになった心をほぐすことができます。
自己批判が弱まり、ありのままの自分で良いと思えるようになれば、自信が生まれ、勇気を持って行動を起こしたり、新しいことにチャレンジしたりできるでしょう。
自分を励ますことでモチベーションを維持し、困難に直面した時や失敗した際に力となるレジリエンスも身につけることができます。
MSCに参加することで得られるもの・学べること
- 日常生活におけるマインドフルネスおよびセルフ・コンパッションの実践
- セルフ・コンパッションについての心理学的な理解
- 大切にしたい価値観に沿った人生を送るための自己理解
- 難しい感情を上手に扱うスキル
- 自己批判ではなく、優しさを持って自分自身を動機付けること
- 困難な人間関係との向き合いかた
- ケアする立場にある人のバーンアウト(燃え尽き)の防ぎかた
- 自分自身をポジティブに評価し、感謝の気持ちを持つこと
- 簡単なセルフ・コンパッションのスキルを他者に教えること